オトナのVPD一覧

オトナと子どもでは、同じVPDでも症状や接種スケジュールが異なります。オトナのVPDとワクチンについて解説します。

子宮頸がん、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染症

どんな病気? オトナがかかるとどうなる?

子宮頸がんは、性交渉によってHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染し、持続感染することでがん化するVPDです。日本での患者数は年間約1万人、20代後半から増加し40代以降は概ね横ばいになります。早期に発見されれば比較的治療しやすいといわれていますが、年間約3,000人が死亡しています。最近では、20代から30代の患者さんが増えています。

HPVワクチン2~3回(小学6年~高校1年の女子は定期接種)
9価ワクチン「シルガード9」、4価ワクチン「ガーダシル」、2価ワクチン「サーバリックス」の3種類のワクチンがある。
9価ワクチンは、初回接種が15歳未満の場合、2回または3回接種。初回接種が15歳以上の場合、3回接種。
4価ワクチン、2価ワクチンは3回接種。

性交渉前の年代は、ワクチンで予防

子宮頸がんを予防するには、検診とワクチン接種があります。子宮がん検診は、早期発見により子宮摘出や死亡を減らすことができます。しかし、円錐切除術(子宮頸部の早期がん部分を切除する手術)は妊娠後に早産や流産のリスクを高めますし、発見が遅れれば、子宮摘出を余儀なくされるときもあります。性交渉の経験がある人は、定期的な検診を忘れずに受けましょう。
一方、ワクチン接種は、子宮頸がんの原因となるHPV感染を予防しますので、命を守るだけでなく、手術そのものを避けることができます。子宮頸がんの最善の予防は、HPVに感染しないことです。性交渉の前の年代であればHPVワクチンを接種しましょう。

接種機会を逃した人のキャッチアップ接種

1997年4月2日生まれ~高校2年生の女子は、2025年3月末までの間、無料でHPVワクチンを受けられます。また、2022年3月までに自費でワクチンを受けた人に対して接種費用を払い戻す制度があります。対象者、申請方法、償還額、申請期間は自治体ごとに異なる場合があります。詳しくは、お住いの自治体にお問い合わせください。

3種類のHPVワクチン

定期接種で受けられるHPVワクチンは、9価、4価、2価の3種類です。詳しくは下表をご参照ください。

価数
ワクチン名
接種スケジュール 予防するVPD 対象対象
9価
シルガード9
●初回接種が15歳未満の場合
2回接種:初回から5か月以上(標準的には6か月)あけて2回目。
3回接種:初回から1か月以上5か月未満(標準的には2か月)あけて2回目。2回目から3か月以上(標準的には4か月)あけて3回目。
●初回接種が15歳以上の場合
3回接種:初回から1か月以上(標準的には2か月)あけて2回目。2回目から3か月以上(標準的には4か月)あけて3回目。
90%の子宮頸がん(16、18、31、33、45、52、58型)、尖圭コンジローマ(6型、11型) などのヒトパピローマウイルス感染症 9歳以上の女子
4価
ガーダシル
初回から1か月以上(標準的には2か月)あけて2回目、2回目から3か月以上(標準的には4か月)あけて3回目。 70%の子宮頸がん・肛門がん (16、18型) 、尖圭コンジローマ(6、11型)などのヒトパピローマウイルス感染症 9歳以上の男女
2価
サーバリックス
初回から1か月以上(標準的には1か月)あけて2回目、2回目から2.5か月以上(標準的には5か月)かつ1回目から5か月以上あけて3回目。 70%の子宮頸がん(16、18型)などのヒトパピローマウイルス感染症 10歳以上の
女子

どのワクチンも接種回数は3回です。海外では、15歳未満では2回接種が一般的です。

男子もHPVワクチンの接種を

2020年12月、4価HPVワクチン(ガーダシル)を男子が接種できるようになりました。

HPV(ヒトパピローマウイルス)は性交渉によって感染するため、女性のみならず男性へも接種することで感染の広がりを抑えることが期待できます。 世界では、オーストラリアは2007年から、米国では2009年から男子への定期接種を導入し、HPV感染や前がん病変の減少が確認されています。

また、HPVは、女性の子宮頸がん以外にも中咽頭がんや肛門がんなどのがんや、尖圭コンジローマなど男性の感染症の原因にもなります。パートナーの女性を子宮頸がんから守るとともに、男性本人がHPV感染を予防することも大切です。

ワクチン接種後の症状とワクチン接種には科学的な因果関係はありません

HPVワクチン接種後の慢性疼痛などの身体的症状とワクチン接種には科学的な因果関係はないことが、国内の研究でも明らかになっています。名古屋市が7万人以上を対象にHPVワクチン接種および接種後の具体的な症状に関する大規模な疫学的研究(”名古屋スタディ”と呼ばれています)を実施しました。その結果、HPVワクチン接種後にワクチンとの関連が疑われた症状の発生頻度はワクチンを接種した人とワクチンを接種していない人の間で違いが認められませんでした。

参考HP