思春期・青年期のワクチンで防げる病気

10代から20代にかけて、重症になりやすいVPDがあります。

思春期・青年期に感染しやすいVPD

子宮頸がんや中咽頭がんなどの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染症や肝臓がんの原因となるB型肝炎は性交渉などで感染します。将来のがんも、ワクチン接種で予防できます。
髄膜炎菌感染症はあまり知られていませんが、乳幼児と10代後半に多く、急激に悪化して死亡や後遺症のリスクが高いVPDです。

 

ポイント 予防・ワクチン
HPV感染症(子宮頸がんなど
  • HPVは、子宮頸がん、中咽頭がんなどのがんや尖圭コンジローマの原因となる。
  • 子宮頸がんは、HPV感染が原因の30代~40代の若い女性に多いがん。
  • 進行すると子宮摘出や死亡につながり、早期発見でも早産・流産リスクが高まる。
  • 2価、4価ワクチンで子宮頸がんの約70%を、9価ワクチンで約90%を予防できる。
  • ワクチンは性交渉を経験する前(HPV感染前)に接種すると効果的。
  • ワクチンには、すでに感染しているHPVの治療効果はない。
  • 欧米ではワクチン接種の効果として、子宮頸がんの減少が報告されている。スウェーデンでは17歳未満の接種で88%リスク減少、英国では12-13際の接種で87%リスク減少。
  • 海外では男性へのワクチンが推奨され、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど20か国以上の国で公費接種が行われている。日本でも男子への定期接種が検討され、一部の自治体では接種費用を助成している。

HPVワクチン

【定期接種】2~3回:小学校6年生~高校1年生の女子】

・9価ワクチン「シルガード9」:初回接種が15歳未満の場合、2~3回接種。初回接種が15歳以上の場合、3回。

・4価ワクチン「ガーダシル」、2価ワクチン「サーバリックス」:3回。

【任意接種】2~3回
対象は9歳以上の男女。
・初回接種が15歳未満の場合、2~3回接種。初回接種が15歳以上の場合、3回。
・9価ワクチン「シルガード9」:2~3回
・4価ワクチン「ガーダシル」、2価ワクチン「サーバリックス」:3回
・2価ワクチン「サーバリックス」は女子のみ接種可能。

B型肝炎(急性肝炎、慢性肝炎)、肝臓がん、肝硬変
  • B型肝炎ウイルスに感染し急性肝炎をおこす。一部は劇症肝炎で重症化する。
  • 家族内や性交渉でB型肝炎ウイルスに感染し、一部がキャリア化する。
  • 欧米型のB型肝炎ウイルスは、年長者の感染でも慢性化するリスクが高い。
  • ワクチンは性交渉を経験する前に接種すると効果的。
  • 家族やパートナーがB型肝炎キャリアの場合は直ちにワクチンを接種。
  • コンタクトスポーツ*の選手や関係者は、B型肝炎ワクチンの接種を推奨
    ※ コンタクトスポーツ:必然的に相手の選手と肉体的接触があるスポーツ。レスリング、柔道、フットボール、ハンドボール、ボクシング、バスケットボール、水球等

B型肝炎ワクチン

【任意接種】3回

【定期接種】3回:0歳

髄膜炎菌感染症
  • かかりやすいのは、小児、高齢者とともに10代後半~20代前半。
  • 発症後は急激に悪化して、死亡や四肢切断などの後遺症を残すリスクが高い。
  • 寮などの集団生活では感染リスクが高まるので、ワクチン接種がおすすめ。

髄膜炎菌ワクチン

【任意接種】1回

新型コロナウイルス感染症
  • 2019年末頃から世界中で流行している。現在は比較的落ち着いているが、地域によっては依然として流行が見られる。
  • ウイルスの株によって症状や重症度が変わる。2023年4月までに10代、20代で100名以上が命を落としている。
  • 若い人では、心筋炎・心膜炎などの合併症がある。新型コロナウイルス感染による心筋炎は、ワクチン接種後に発症する心筋炎よりも頻度としてはるかに高い。
  • 年齢や性別、基礎疾患の有無、コロナ発症時の重症度に関わらず、新型コロナウイルス感染症の回復後に、せきや倦怠感、精神症状などの後遺症がみられる。

新型コロナワクチン

【任意接種】1回

新型コロナワクチンの未接種者は2回

※他のワクチンと同時接種可

思春期以降にかかると重症化するVPD

麻しん(はしか)は感染力がたいへん強く、ワクチン未接種の人はほぼ100%かかります。接種回数を確認して、未接種の場合はできるだけ早く接種しましょう。
学校では集団感染のリスクもありますので、ワクチンの接種率を上げることが重要です。
また、これらのVPDは、妊娠中に感染するとさらに重症化したり、流産や早産、先天性障害の子どもが生まれたりします。子どもの未来を守るためにも、妊娠出産する前の年代でワクチン接種をしておきましょう。

 

ポイント 予防・ワクチン
麻しん (はしか)
  • 空気感染し感染力がたいへん強く、ワクチン未接種者が感染するとほぼ発症する。
  • 大人は重症化して入院治療が必要。
  • 妊娠中の感染は、早産・流産・死産のリスクとなるので、妊娠する前にワクチンを接種する。
  • かかったことのない人は、ワクチンを2回接種。

MRワクチン

【任意接種】2回

※1990年度生まれから2回の定期接種の機会あり

【定期接種】2回:1歳、小学校就学前

風しん
  • 大人は軽症で済む場合もあるが、発疹や発熱がなくても人にうつす可能性がある。
  • 妊娠初期の感染は、先天性風しん症候群のリスクが高い。
  • かかったことのない人は、男女ともにワクチンを接種。

MRワクチン

【任意接種】2回

※1990年度生まれから2回の定期接種の機会あり

【定期接種】2回:1歳、小学校就学前

水痘(みずぼうそう)
  • 空気感染し感染力がたいへん強く、ワクチン未接種者が感染するとほぼ発症する。
  • 成人の初感染は、重症化しやすく入院リスクが高い。
  • 症状は、高熱、倦怠感、重篤感が強く、多くの水疱を生じる。合併症として水痘肺炎、水痘の重症度に関係なく水痘脳炎の報告がある。
  • 妊娠初期から中期(20週未満)の感染は、先天性水痘症候群のリスクが高い。後期の感染では水痘肺炎の重症化がある。
  • かかったことのない人は、ワクチンを2回接種。

水痘ワクチン

【任意接種】2回

【定期接種】2回:1歳~2歳

おたふくかぜ
  • 子どもに比べて重症化しやすく、合併症リスクが高くなる。
  • 後遺症として一生治らない重度の難聴がある。
  • 妊娠初期の感染は、流産のリスクが高まる。
  • かかったことのない人は、ワクチンを2回接種。
  • 現在、麻しん風しんおたふくかぜ混合(MMR)ワクチンの承認申請中。

おたふくかぜワクチン

【任意接種】2回

インフルエンザ
  • 毎年、冬に流行し、学校では出席停止や学級閉鎖などの措置が取られる。
  • 10代は高いところから飛び降りるなど異常行動がみられることがある。
  • 肺炎など重症化を予防するにはワクチン接種が有効。
  • 欧米では20年以上前から使用されていた鼻に噴霧する経鼻生ワクチン「フルミスト」が2024年から接種できるようになった。

インフルエンザワクチン

毎年秋に接種

【任意接種】1~2回

不活化ワクチン1回:12歳以下は原則2回

経鼻生ワクチン1回:2歳~18歳

日本脳炎
  • 2005年度(平成17年度)から2009年度(平成21年度)まで定期接種の積極的な勧奨接種を中止していたため、現在、特例措置(詳細右欄)が取られ、不足回数分を定期接種として受けられる。

日本脳炎ワクチン

【定期接種 第2期】1回:9~12歳

【定期接種 特例措置】

1995年4月2日~2007年4月1日生まれの人:20歳未満で4回

【定期接種 第1期】3回:3~4歳

予防接種の免疫力が弱くなっているVPD

ワクチン接種で免疫を強化しておきます。あわせてワクチンの接種回数を確認しておきましょう。

 

ポイント 予防・ワクチン
百日せき
  • 百日せきに対する免疫力が低下して、小学生~大人の百日せきが増加。
  • 2024年以降顕著な増加傾向が続き、2025年の患者報告数は過去最大となっている。
  • 乳児がかかると命に関わるため、周りの者がうつさないことが重要。
  • 周囲に妊婦や低月齢の乳児がいる人は、定期接種の二種混合ワクチンを三種混合ワクチンに変更して接種(任意接種)がおすすめ。

三種混合ワクチン

【任意接種】1回

五種混合ワクチン

【定期接種】4回:0歳、1歳

破傷風
  • 二種混合ワクチンを受けて10年たつと追加接種が必要。
  • 災害地などボランティアに参加する場合は、あらかじめ接種が必要。

二種混合ワクチン

【定期接種】1回:11~12歳

二種混合ワクチンまたは破傷風ワクチン

【任意接種】1回

破傷風・ジフテリア・ポリオワクチンについて:これまでに感染したことがなく、ワクチン接種の確認ができない人はワクチン接種で免疫をつけVPDを予防するためにワクチン接種をおすすめします。

(2025年12月更新)

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